読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Future In Blue

見切り発車。

【本】ただの贅沢三昧じゃない「饗宴」と「食べ物の恨み」を知った『ワインと外交』

ワインと外交 (新潮新書)
by カエレバ

内容(「BOOK」データベースより)
饗宴のテーブルは時に、表向きの言葉よりも雄弁に「本当の外交関係」を物語ることがある。ブッシュが食べたフレンチフライ、「海の幸だけ」が出された独仏首脳の会食、天皇主催の晩餐会で飲まれなかった高級ワイン、日韓首脳会談における盧武鉉の驚くべき発言…。真の政治的メッセージは、そうした饗宴の細部に宿るのだ。ワインとメニューから読み解く国際政治の現実。

「食事」のメッセージ性

この本で取り上げられている「饗宴」は、テレビで見るのは乾杯のシーンくらいだけでメニューの中身を知ることはなかったのだけれども、ただ、良いものや美味しいものでもてなすだけではなく料理やワインに深い意味を持たせて外交手段の一つとして成り立っていることを知ることがわかりました。

しかし、こんな「饗宴」に自分が出ることはないのはわかっていますが、身近な会食や宴会とかでもセッティングする側が「意図」を持ってメニューやお酒を決めた時にその一部でも読み取ることはできるのだろうかと…。

そんな世の中「美味しんぼ」や「神の雫」みたいに料理やワインで悩みやトラブルが解決したりなんてないだろうとは思っていたのですが、この本では外交という括りですがトラブルが生まれたり解決に向かったりする実例が見られ、スケールダウンはされていても自分の身の回りでもある意味での「食べ物の恨み」があるのではと少し心配になったりしました。

イメージより品数が少なかった

過去ではやはり贅沢な食材を惜しげもなく使い、料理の品数が多いほど丁重なもてなしとされたようで、1896年のフランスで行われたロシア皇帝ニコライ二世を歓迎する晩餐会では18品の料理とデザート、8種類の飲み物が出されたといいます。

2004年のノルマンディー上陸作戦の60周年を記念して行われた式典では

<料理>
フォアグラと半熟卵、シードル風味で
ノルマンディーの仔羊、トマト甘煮とナス焼き添え
地元のチーズ
チョコレートケーキ
<飲物>
シャトー・クリマン89年
シャトー・ラトゥール89年
シャンパン テタンジェ・コント・ド・シャンパーニュ95年

と、昼食というのもありますが料理とデザートで4品、飲み物も3種類と普通のコース料理より質素な印象を受けました。

また、ソムリエによるとワインを89年のヴィンテージで揃えたのは「ベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終結して新しい世界が誕生した区切りの年にしました」という意図があるそうで、その料理の内容や選ばれるワインには、相性はもちろん産地やワインの年代でのメッセージの暗示など、ただ料理の美味しさだけではなく政治的にも知恵を絞って組み立てられているのは意外でした。

普通の一言に思えても、知る人には引っかかるものがあるということ

2005年の小泉首相のソウル訪問時の共同記者発表後、廬武鉉大統領が「きょうの夕食は軽めにする考えです」と述べたのを聞いて、著者は耳を疑ったといいます。

会見の終わりに、そのあとに持たれる会食について、首脳が軽口を叩くことは珍しくない。政治の話の後の雰囲気を和らげる効果もある。しかし両国関係がトゲトゲしいとき、「夕食は軽めにする」という言葉は軽口ではすまない。それは「あなたを歓待しません」「もてなしのレベルを下げます」という意味にとられかねないからだ。しかも食べきれないほどの料理でもてなすのが礼儀といわれている韓国である。外交の場における「食」は、政治的象徴性をもつだけに、一つ間違うとシコリを残す。

その一方、同じ年にフランスのシラク大統領がドイツのシュレーター首相を迎えて饗宴を開いたとき、もてなした料理は「海の幸の盛り合わせ」のみだったということに著者は驚いたそうですが、先ほどの日韓の饗宴とは逆に「軽い食事」であることで打ち解けた仲であることが読み取れたからという記述がありました。

同じ「軽い食事」と言っても背景を知る人にとっては時に真逆となるような意味を読み取ることができるのだなぁと…。